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派遣とアルバイトの違いによるメリットは?社会保障の基本情報を紹介

派遣とアルバイトの違いによるメリットは?社会保障の基本情報を紹介

正社員・派遣社員・アルバイトなど、さまざまな雇用形態で働く人が増えています。給料や安定性、病気やケガの場合の保障など、働くうえでとても気になる点ですが、雇用形態の違いによって差が出てくるのでしょうか。

そこで今回は「お金のプロ」であるファイナンシャルプランナーの工藤さんに、アルバイトと派遣にどのような違いがあるかを解説してもらいました。

アルバイトと派遣の違い1 ~給与~

派遣とアルバイトの違いによるメリットは?社会保障の基本情報を紹介_1

同じ会社で同じ仕事であれば、多くの場合、アルバイトと派遣で受け取る給与に差は生じません。

給与以外の年金保険などの社会保険費用は、派遣の場合、派遣会社が負担しますが、直接雇用であるアルバイトの場合、働いている会社が保険などの費用を負担することとなります。

アルバイトと派遣の違い2 ~安定度~

派遣とアルバイトの違いによるメリットは?社会保障の基本情報を紹介_2

アルバイトと派遣の安定度を比べてみましょう。

期間の定めのあるアルバイトの場合、本人に違法行為があったり、アルバイト(就業)先会社の経営が厳しくなったり、組織変更や会社移転などの事情がなければ、本人とアルバイト(就業)先の会社が合意し、契約期間の更新が行われます。

期間の定めのある派遣の場合、同一企業の同じ部署(組織単位)に3年を超えて働くことができません。一方、同じ派遣であっても、期限を定めずに派遣会社と雇用契約を結び、派遣スタッフとして働く無期雇用派遣であれば、派遣契約の期間満了による雇い止めに不安を感じることなく働くことができるようになります。また、直接雇用を前提とした紹介予定派遣であれば、派遣期間(最長6ヶ月)終了後、本人と派遣会社双方合意のもと派遣先企業での直接雇用の正社員、契約社員として働くことが可能です。

アルバイトと派遣の違い3 ~社会保障~

派遣とアルバイトの違いによるメリットは?社会保障の基本情報を紹介_3

働く人の生活や人生を支えるために、さまざまな社会保障の制度があります。公的年金、健康保険、介護保険、雇用保険、労災保険の仕組みは、アルバイトで働いているか、派遣で働いているかによって、基本的に変わることはありません。しかし、気をつけなければならないこともあります。

(1)年金保険・健康保険

民間企業で働く労働者に適用される年金保険制度には、国民年金制度と厚生年金制度があります。日本の年金保険制度は、国民年金制度のうえに、厚生年金保険制度を積み上げる形で作られており、国民年金制度は全員加入する義務がありますが(そのため、「基礎年金」と呼ばれることもあります)、厚生年金制度には民間企業で働く労働者全員が加入するわけではありません。

本人の置かれている状況によっていろいろと違いが出てきますが、ここでは、よくある例をあげておきます。

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・労働時間や労働日数が少ない (同一企業に雇用されている通常の労働者の4分の3未満が目安) ・雇用主の会社や派遣会社の従業員数が500人以下の職場に勤務

この場合、厚生年金制度に加入する義務はありません。
ただし、通常の労働者の所定労働時間及び所定労働日数の4分の3未満であっても、下記の5要件をすべて満たす方は、被保険者になります。

1.週の所定労働時間が20時間以上あること
2.雇用期間が1年以上見込まれること
3.賃金の月額が8.8万円以上であること
4.学生でないこと
5.常時501人以上の企業に勤めていること

また、厚生年金保険に加入する配偶者がいない場合等被扶養者とならない場合には、自らの負担で国民年金保険料を支払う義務があります。

健康保険についても、ほぼ同様です。配偶者がいるか、いないか、年収額がいくらか、勤務日数が何日か、勤務時間が何時間か等、さまざまな事情で扱いが異なってくるので、いずれにしても、自分自身で、しっかりと確認し、必要な場合には会社あるいは派遣会社の担当部署に問い合わせましょう。

なお、厚生年金保険や健康保険に加入する場合、保険料は、給料から天引きされます。アルバイトであれば会社が、派遣であれば派遣会社が、それぞれ計算して差し引いた金額を給料として支払います。また、40歳以上であれば、健康保険の保険料と併せて、介護保険料も天引きされます。

(2)雇用保険制度

雇用保険とは、失業している期間や育児・介護休業期間中など、仕事をしていない期間の生活を経済的に補助する、とても重要な保険制度です。

通常、31日以上雇用される見込みがあり、週の労働時間が20時間以上となる場合、正社員、アルバイト、派遣といった雇用形態にかかわらず、すべての人が対象となります。農林水産業の一部を除き、労働者を雇用する事業主は、その業種、規模等を問わず、雇用保険に加入する義務があるため、通常、雇われて働いている人のほとんどが雇用保険の被保険者です。

アルバイトの場合は、働いている会社で雇用保険、派遣の場合、派遣会社で雇用保険に入ることになります。そのため、離職した場合には、アルバイトであれば働いている会社から、派遣であれば派遣会社から、離職票や退職証明書といった書類が送付されます。とりわけ離職票は、失業した場合に受給できる求職者給付のために必要な書類です。仮に送付されないといった事態が発生したら、それぞれのところに依頼しましょう。

(3)労災保険制度

労災保険とは業務上また通勤途中のケガや病気に対して保険給付を行う制度です。労災保険制度は正社員、アルバイト、派遣といった雇用形態にかかわらず、雇用されている労働者すべてに保険給付を行うものです。労働災害などで負傷したら、アルバイトの場合は働いている会社、派遣の場合は派遣会社が、労災手続き(給付請求書の提出)を行います。その後、労働基準監督署が労災かどうかを判断し、認定されれば保険給付を受けることができます。

派遣の場合には、派遣会社が労災保険給付の請求書を作成するとともに、派遣先から、負傷日時や発生状況に関する証明を受けなければなりません。そのため、業務上のケガ等が発生したら、派遣会社への連絡とともに、派遣先にも連絡する必要があります。

今後の雇用……アルバイトと派遣はどのように変わっていく?

派遣とアルバイトの違いによるメリットは?社会保障の基本情報を紹介_4

現在、アルバイトと派遣のどちらを選択しようか迷っている人は、「3年後、5年後にこれらの雇用形態がどうなっているのか」という点も気になるかと思います。

現在、政府が進めている「働き方改革」の一環として、2018年6月に、パート労働法及び労働者派遣法の大きな改正が行われました。その主要な目的は、正社員と非正規社員(パート労働者、有期雇用労働者、派遣労働者)の間にある労働条件格差を是正することにあります。これらの法律は、2019年~2020年に施行されます。

また、派遣の働き方に関しては、2015年に労働者派遣法の大きな改正がありました。この法改正によって、派遣で働く労働者の雇用の安定が重視されるようになりました。

どのような雇用形態で働くか、それぞれのメリットやデメリットをよく理解し、自分のライフスタイルに合わせて選んでいくことが望ましいと思います。これを機に、自分のキャリアや仕事への考え方を見つめ直してみてはいかがでしょうか。

定年まで一つの会社に勤めあげることを良しとする考え方は変わりつつあります。さまざまな価値観が認められる昨今だからこそ、自分自身で考えてみるのと同時に、家族や友人などと働き方について話し合ってみるのもよいかもしれませんね。